社長ブログ 「心をこめてありがとう」


連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(15)

  • < W杯奮闘記 >
  • 2008.09.17

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
~ひたむきにひとつひとつ心をこめて~
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第四章 桜舞い散る』

    連載 第15回!

     ●JAPAN・・・スコットランド戦

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スコットランド戦前日のミーティング。

「練習は試合のように。試合は練習のように」
という言葉をスクリーンに掲げた。

テクニカルチームからの熱いメッセージを込めた。
明日は練習どおり平常心で試合に臨めばいい。

練習は積み重ねてきたはず、プラスアルファの力は、
ワールドカップなのだから自ずと発揮される。

スコットランド戦当日のジャージ授与式。

「集大成。好きな道で志を立て一芸に秀でれば
望みは叶う」という言葉を掲げた。

最後に秋廣さんが編集した「感動ビデオ」が上映された。

歴代の日本代表が過去のW杯で奮闘している姿が、
中島みゆきの「銀の龍の背に乗ってー♪」という
メロディに乗ってスクリーンに浮かぶ。 

過去の日本代表が築いてきた歴史を受け継いで、
今度は俺たちが新しい歴史を創ろうというメッセージだ。

続いてアップテンポなトランス系の曲に変わり、
2003年新生ジャパンの好プレー(タックルとセービング中心)が
次々に出てくる。

締めはイングランドA戦のディフェンスの粘りから
奪った大畑大介選手のトライだ。

今日もあのときの粘りを80分間分見せて欲しい。
そんな気持ちが込められていた。

最後にマコーミック前日本代表キャプテンが登場した。

「待っていたらチャンスは生まれません。
積極的に自分からアタックしてください。
次の試合じゃなくて今日の試合、力出して、
自信を持って勝ってください」

滑らかな日本語ではなかったけれど、
心のこもった誠実な言葉だった。

日本代表対スコットランド代表戦の国家斉唱が始まった。

今までの苦労が蘇った。

ジャパンの仕事が忙しくて、ラグビー選手としての
自分の練習が思うようにできず、
精神的にきつい時期もあった。

自分の言動の意図がうまく伝わらず
誤解を受けて苦しんだときもあった。

答えの見えない闇の中で挑戦をあきらめかけたこともあった。
でもあきらめなかった。

「君が代」を歌いながら、もうこのチームで
自分が遣り残したことはないと確信した。

後は選手達を力いっぱい応援しよう。
自然と涙がこぼれた。

スクラムハーフの辻高志選手がスコットランドの大男に突き刺さる。
フランカーの大久保直哉選手もビックタックルを連発。

センターのルーベンパーキンソン選手も刺さる。
NO8の伊藤剛臣選手も刺さる。

こぼれ球をフッカーの網野正大選手がセービングする。

そのたびに私は絶叫した。
「いいぞ!ジャパン!頑張れ!」

途中まではほぼシナリオ通りだった。
ビーバー達が粘り抜いて試合を造った。

アンドリュー・ミラー選手が投入されて、
イーグルになったジャパンはすかさずショートフェイズの
一発サインプレーでワントライを奪い返した。

試合の終盤までどっちが勝つかわからない見事な試合だった。

しかし、あと一歩及ばなかった。大金星を逃した。
負けてめちゃくちゃ悔しかった。

試合後、街ですれ違うオーストラリア人にもスコットランド人にも
「Well-done, JAPAN, You play very well. It was very close.」
と言われた。

負けて悔しいけど、ちょっと嬉しい。

試合後の街のパブでスコットランド代表のキャプテンの
ブライアンレッドパス選手がいたので話しかけてみた。

村田
「今日はおめでとうございます。レッドパスさん。
ぼくは日本代表でテクニカルスタッフをしている祐造と言います。
だからあなたのことは良く知っています。よろしくね。」

ブライアン 
「やあ 祐造。今日、日本はよくやったね。
本当に勝つのが難しかった。今日は呑もうぜ。」

村田   
「スコットランドはカバーディフェンスが
厚くて精神的にタフでひたむきなチームで本当に強かった。
私はスコットランドのラグビー大好きです。
もう少しのところまでいったのに。
非常に残念です。ところであなたミスタービーンに似ていますよね。」

ブライアン (ちょっと怒った顔をしてから大爆笑)
「このやろー。よくも言ってくれたな。
ジョークのお礼にこれをプレゼントするよ。
今日の試合の記念のピンバッジだ。」

村田   
「うわーありがとう。いい記念になります。とても嬉しいです。」

ブライアン
「OK。祐造。次の試合の幸運を祈るよ。」


次回へ続く・・・


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